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板宿で

初めて板宿で降りたのは
滑り止めの受験のときだった。
それほど親しくはなかった
谷口君と一緒で、
あの子もかとほっとしていた。
だけど、何故か悲しかった。
二月の雨の日だったからか、
谷口君は少し震えていた。

ぼくは、板宿でほっとして、
そして、悲しくなったことを
覚えていた。
それが、何になったのかと、
考えているうちに、
すっかり年をとった。
髪は白くなり、目が霞んでいる。

ましてや谷口君が、
どこでどうしているかなんて、
わかるはずもない。

それなのに、板宿は板宿のままだ。
山陽電車に乗って板宿で降りて、
商店街を抜けてみよう。
それなら、スタンドバイミーに
寄ってみよう。
谷口君がいたらどうしよう。

ぼくは今、震えている。
ノスタルジーが震えている。
寒いから、人々も震えている。
この街角、この商店街、この板宿。
by SBM0007 | 2016-12-15 00:54 | スタンド・バイ・ミー

葉のひとしずく

by SBM0007